Zscaler(ZS)の銘柄分析(ビジネス/収益モデル・決算まとめ)

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クラウドベースでネットセキュリティを提供している企業Zscaler(ズィー・スケーラー)の会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。

日本で投資先として人気がある? CrowdStrike(クラウドストライク)との違いについても触れています。

PPT

SaaSアプリやクラウドへ安全に接続できるようするセキュリティサービスを提供

クラウドベースのセキュリティ企業、SaaSモデルで粗利80%

直近四半期売上は$176で前年同期比+60%と成長が加速

・21年度売上ベースのPSRは38と高め

当記事は私自身の投資活動ににおいて興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。

とある旧財閥系オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。

今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。

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不思議紳士
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会社概要

それでは会社概要について見ていきましょう。

基本情報

Zscalerはアメリカ、カリフォルニアに本社を置き、クラウドベースでの情報セキュリティを提供するSaaS会社です。

具体的には正しいユーザが正しいSaaSアプリやクラウドに安全に接続できるようするクラウドベースのセキュリティサービスを提供しています。より詳しい内容はプロダクト部分で解説します。

グローバル150のデータセンタGoogle検索の10倍の件数(1兆6,000億回)のトランザクションを毎日処理し、1億回以上の脅威を検知し、20万回以上セキュリティアップデートを行っているそうです。

設立は2008年と意外と古い会社でJay Chaudhryという方が創業し、現在もCEOを務めています。

Jay Chaudhryはシンシナティ大学でマーケティングのMBA、コンピューターエンジニアリングの修士号、インダストリアルエンジニアリングの修士号を取得しています。 さらにハーバード ビジネス スクールのエグゼクティブ マネジメント プログラムを修了しているそうです。ピンと来ませんが、凄そうな経歴です。

2008 年に Zscaler を設立する前は、ワイヤレス セキュリティ会社である AirDefense を設立し、モトローラに買収されるまで率いていたり、eコマース関係の会社 CoreHarbor を設立し、AT&Tに買収されまで率いていたり、 インターネットセキュリティサービスの会社SecureITを設立し、 VeriSignに買収されるまで主導いたという経歴の持ち主です。

Zscalerは、「アプリケーションがクラウドに移行されるなら、セキュリティもクラウドに移行するべき」という概念に基づいて設立されています。

従来、企業のセキュリティは下の図のように社内でネットワークを構築し、ファイアウォールなどで社内ネットワークとそれ以外のネットワークの境界を監視するというセキュリティが主流でした。

データも社内のデータサーバーなどに保管されることがほとんどでそのサーバーのみを保護すればOKでした。

しかし、近年では企業がOffice365SalesforceWorkdayboxといったSaaSを利用したりAWSAzureといったパブリッククラウドにアプリケーションやデータを保存するなどクラウドサービスを多く利用するようになり、外部のサーバーへアクセスする必要が出てきました。

またCovid-19の影響でテレワークが必要となったことから会社のPCを外部のネットワークで使用する必要性なども出てきて、従来の境界を監視するというセキュリティが通用しなくなってきました。

そのような背景で社内ネットワーク内を安全にし、境界を守るやり方ではセキュリティは十分でなくなった現状を踏まえ、「すべてのトラフィックを信頼しないことを前提とし、検査、ログ取得を行う」という性悪説のアプローチである「ゼロトラスト」が近年ではセキュリティの根幹になりつつあります。

Zscalerはこのゼロトラストを根幹として上記で述べたように正しいユーザが正しいアプリやサービスに安全に接続できるようにクラウドベースのセキュリティサービスを提供しています。

つまりZscalerユーザーがOffice365などのSaaSがある外部サーバーやAWSといったパブリッククラウドへアクセスする部分のセキュリティを担う企業であり、個人のPCやモバイル端末といったエンドポイントのセキュリティを担うCrowdStrike(クラウドストライク) とは基本競合しないことになります。

例えるならばZscalerはSaaSアプリやクラウドへのゲートウェイの役目ですね。

実際HPにいくとわかるのですが、CrowdStrikeはパートナーとして紹介されており、両社を組み合わせることでより強固なセキュリティが完成するといったことが載っています。

なおCrowdStrikeについてはNekoさんのNoteが非常に参考になります。知っている方も多いと思いますが興味ある方は是非。

米国上場企業分析|CrowdStrike Holdings, Inc.(CRWD)|neko
2020年7月25日:初稿 2020年9月2日:「7.株価」の章を更新  本日はCrowdStrike(CRWD)という、クラウドベースのセキュリティを提供している企業について調べてみます。  エンドポイント(PCやモバイル)でのセキュリティに強みを持つプロダクトを開発しています。2013年にGartnerによりE...

そしてZscalerはこの分野でガートナーのマジック・クアドラントで10年連続でマーケットリーダーとして認識されています。同じ分野の競合としてはCiscoやMcAfee、Symantecといった老舗セキュリティ企業が並んでいます。

不思議紳士
不思議紳士

マジック・クアドラントとはITコンサルティング会社のガートナーが発行している一連の市場調査レポートのことで、右上のリーダーが最高評価です。

詳しく知りたい方はWiki

プロダクト

上記でZscalerの内容について理解できたかと思いますので。続いてZscalerの具体的なプロダクトをさらっと見てみます。

主にプロダクトは4つあります。 Zscaler Internet Access(ZIA)、Zscaler Private Access(ZPA)、Zscaler Cloud Protection(ZCP)、Zscaler Digital Experience (ZDX)の4つになります。

メインはZscaler Internet Access(ZIA)、Zscaler Private Access(ZPA)の2つになります。

ZCP以外の3つは会社の従業員などがSaaSサービスやインターネットパブリッククラウドにアクセスするセキュリティーや、ネットワーク問題などを解決するサービスで、ZCPはパブリッククラウド内のセキュリティサービスになります。

Zscaler Internet Access(ZIA)はSaaSアプリや外部のインターネットへの高速かつ安全なアクセスを提供するクラウドサービスです。

会社の従業員がSaaSアプリ(Office365Salesforceboxなど)や外部のインターネット(GoogleYoutubeLinkedinなど)へのアクセスのセキュリティを提供しています。イメージは以下のような感じです。

Zscaler Private Access(ZPA)は、パブリッククラウドやデータセンタで動作する内部アプリケーションへのセキュリティアクセスを提供するサービスです。

パブリッククラウド(AWSAzure)へのアクセスやパブリッククラウド内で動く内部アプリ(SAPなど)へのアクセスセキュリティを提供します。VPNが不要になるサービスですね。

インターネットがVPN不要のセキュアネットワークになり 第三者にデータを傍受されるリスクがなくなるというメリットがあります。

イメージは下記です。

Zscaler Cloud Protection(ZCP)はパブリッククラウド内のセキュリティサービスです。

クラウド内にあるアプリケーションの誤設定を自動的に識別し、リスクを分析、自動修復を行うサービスになります。

Zscaler Digital Experience (ZDX)はユーザーのSaaSへのアクセス・行動や外部インターネットへのアクセス、パブリッククラウドへのアクセス・行動などを簡単にモニターできるサービスになります。

エンドユーザーデバイス、ネットワークパス、およびアプリケーションのパフォーマンスへの途切れのないモニターを行い、エンドユーザーエクスペリエンスの問題を積極的に検出、トラブルシューティングを行います。

それぞれの値段設定は以下の通りで、基本的なZIAが$45+αの機能を付けると$75になります。

ZPAも$45で、ZDXは$25になります。ユーザーに関するZscalerの全てのサービスを適用すると$145となります。Annualなので年間使用料でこのくらいの料金です。

ZCPが基本$40でそこに機能を追加していくと$155となります。こちらも年間の料金です。

なお、これらは5,000ユーザー以上の場合の値段のようです。

収益/ビジネスモデル・顧客

クラウドサービス企業のため、収益は顧客からのライセンス料になります。

そのため粗利は高い水準で80%前後で推移しています。

売上の世界分布は以下の通りです。アメリカが51%ヨーロッパ、中東アフリカが38%アジアが11%となっています。非常にバランスが取れているなという印象です。

顧客数は5,000社以上、ライセンス数は20Million(2,000万人)以上となっています。

NPSは76とSaaSの平均30を上回っています。

不思議紳士
不思議紳士

NPSとは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、顧客ロイヤルティを測る指標です。 数値は100~-100の間で数値化され高い数値がより良い数値です。

計算方法など詳しくはNTTのページ

顧客リストはこちらから見ることが出来ます。コカ・コーラシーメンスLVMHなどの企業を始め、ボストンロサンゼルスといった都市なんかも顧客になっています。日本ではKubotaや武田、NECなんかが顧客のようです。

Customers
Zscaler's customers are leading organizations from around the globe that depend upon our cloud security platform to enable their business for mobility and cloud

市場見通し・規模

続いてZscalerが事業を展開している市場について見ていきます。

企業のサービスやデータのクラウドへの移行拡大について疑いはないと思います。

SaaSへの移行から始まり、在宅勤務や、パブリッククラウドへのアクセス、IoTや5Gなど盛りだくさんです。

さらにセキュリティ業界も今後大きな成長が見込まれています。

さらにランサムウェア(身代金要求型のコンピューターウィルス)による情報機能マヒ事件や、ハッキングによる情報漏洩事件など、インターネットとDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進化とともに、情報セキュリティの必要性がますます高まっています。

サイバー犯罪による被害総額は世界全体で約$6trillion(約654兆円)にも上ると言わていますが、サイバーセキュリティ業界の売り上げは、2019年の$156Billion(約17兆円)、2020年には$170billion(約18.5兆円)に増大してはいるものの、比較にならないくらい小規模です。

サイバーセキュリティ業界の売り上げは 急速に拡大しており、2021年には$200Billionに到達し、その後も年率+15%で2027年まで拡大し続けるという予想もされています。

The Motley Fool

そのためZscalerがどこをゴールにしているかについて見てみたいと思います。

Zscalerは次の目標として200M(2億)のユーザー100M(1億)のWorklaodでのZscalerが利用されることを目標にしています。

現在のユーザー数は20Mですから10倍のユーザーを目標としています。(Workloadの現在数は不明)

これらを達成するために、新しい顧客を獲得したり顧客内でのユーザー率を上げたり新しいプラットホームを開発したり新たなマーケットを開拓することを目標にしています。

不思議紳士
不思議紳士

Workloadは仕事量という意味ですが、それでは意味が通じないためPPTなどからクラウド内のアプリケーションなどのことを指すと思われます。

それでは現時点のユーザーとWorkloadの拡大余地を見てみます。

Zscalerによると現在サービスを提供するターゲットユーザーは335M(2,000~20,000人企業)、そしてそこからの増分のユーザーが267M(2,000人以下の企業)おり、さらに3rdパーティーの顧客などを含めるとさらに600M人のマーケットがあるというように述べています。

繰り返しとなりますが、Zscalerのユーザー数は20Mなので巨大なマーケットが広がっていると言えるでしょう。

Workloadについては150Mのターゲットがあり、さらに338MのWorkloadがあるとのことです。

このユーザー数とWorkload数と上記のライセンス単価を基に試算されたSAM(Serviceable Market)は以下のようになっています。

ユーザーSAMが$49BillionWorkload SAMが$23Billion、合わせて$72Billionです。後で詳しく述べますが、Zscalerの売上は$600Millionほどですので、売上の120倍ほどのSAMがあることになります。

当然SAMの全てを獲得することは難しいでしょうが、10%でも獲得できれば現状の売上12倍ほどのマーケットを掌握できることになります。

決算情報(21年決算)

続いてZscalerの業績内容について見ていきたいと思います。Zscalerの年度決算少し変わっていて7月〆です。

20年の売上は$431Million(約470億円)、Net Lossは$115Million(約127億円)の赤字となっています。(NonGAAPのEPSは黒字化しています。)

19年からの売上成長率は+42%とボチボチです。

一方21年3Q(4月〆)の売上は$176前年同期比+60%成長が加速しています。

20年の2Qから成長の加速が継続しており、この点非常にポジティブかなと思います。

要因としてはCovid-19の影響によるリモートワークの増加、それに伴うサイバー攻撃増加への対策などが挙げられるかと思います。

SaaSの指標でもあるBillingについても直近2Qと3Qでは前年同期比71%と好調で成長が加速しているのがわかります。

20年の2Qが異様に低いのは比較対象の19年2Qにとある顧客が数年分まとめてライセンス費を払うことを選択したためとのこと。

過去5年と未来2年の売上推移はこのような感じで綺麗な右肩上がりとなっています。

NonGAAPのEPS(一株当たり利益)も19年に黒字化して徐々に上がってきています。

株価、時価総額、バリュエーション

続いて株価、バリュエーション、について見ていきます。

株価についてはこのような感じで、金利が急上昇した2月以降ダウントレンドでしたが、21年5月の決算で株価が跳ねたという感じですね。

となると

時価総額:25Billion

PSR:58倍

(20年通年売上:$431Millionの場合)直近12ヶ月売上ベースだと42倍

PSR:38倍

(21年コンセンサス売上予想$663Millionの場合)

Crowd Strikeもそうですが、セキュリティのSaaSは期待感からかバリュエーションが高いですね。。。

PSRの推移はこのような感じです。Next Twelve MonthだとPSRは31に落ち着くようです。(それでも高いですが…)

株主構成はこんな感じです。

感想

以上Zscalerの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。

感想としては、セキュリティ関係はこれからも期待を持てる分野だと思いますし、成長も加速しているのですが、少しバリュエーションが高いかなという印象です。

ただ、SaaSやパブリッククラウドへのアクセスに関するセキュリティリーダーということで今後も需要は強そうで引き続きウォッチしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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