製造業向けにオンデマンドのマーケットプレイスを提供している企業Xometryの会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。
・製造業向けにオンデマンドのマーケットプレイスを提供する企業(工場とのマッチング)
・43,000を超えるBuyer(顧客)を抱え、NASAやBMW、GEも顧客
・Active Buyerは24,000社で前年比+83%
・20年売上は141$Million、前年比+76%、直近四半期は+65%成長
当記事は私自身の投資活動ににおいて興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。
とある旧財閥系、日経225オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。
今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。
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会社概要
それでは会社概要について見ていきましょう。
基本情報
Xometryはアメリカメリーランド州ロックビルに本社を置き、製造業向けにオンデマンドのマーケットプレイスを提供する企業です。
メリーランド州はイメージが湧きにくいと思いますが、ワシントンD.C.に隣接する州です。
Xometryは新たに部品調達や金型の製作、工具ツールの開発などをしたいメーカーと提携工場とのマッチングを行うマーケットプレイスを提供しています。
具体的には、メーカーは製造したい部品の仕様書を専用サイトからアップロードすると、AIが、対応可能な提携工場を探し、見積書をWeb画面上に提示します。
メーカーがその条件に納得すれば、1クリックで部品の生産が開始される流れとなります。
BMWやNASAをはじめとする43,000を超えるBuyer(顧客)を抱え、Seller(製造提携メーカー)は5,000以上となっており、創業以来、600万点を超える部品がXometryのプラットフォームを通じて製造されてきました。
設立は2013年とぼちぼち新しい会社でRandolph Altschulerという方が共同創業し、現在もCEOを務めています。
Randolph Altschuler氏はXometry設立前、2008年~2013年に電子機器のリサイクルサービスのプロバイダーであるCloudBlueTechnologiesの共同創設者兼会長を務めていたようで、2000年から2007年までOfficeTiger, Inc.の共同創設者兼共同CEOを務めていたそうです。そしてハーバード大学でMBAを取得しているようです。
Xometryは「to accelerate innovation by providing real time, equitable access to global manufacturing capacity and demand」を会社ミッションにしています。訳は「グローバルな製造能力と需要にリアルタイムで公平なアクセスを提供することにより、イノベーションを加速する」といったところでしょうか。
さらに「to drive efficiency, sustainability and innovation by lowering the barriers to entry to the manufacturing ecosystem」を会社ビジョンとしています。訳は「製造エコシステムへの参入障壁を下げることにより、効率的で、持続可能性な、イノベーションを推進すること」といったところでしょうか。
オールドエコノミー勤めの私としては非常に気になる企業です笑
大手のメーカー企業は常に同じ提携工場を使うのではなく、最新の技術や設備を導入している工場や安価に引き受けてくれる製造元を世界中から探して、発注したいと常々思っています。
しかし、新規取引先の開拓には、信用状況や技術レベルを企業自身で個々に調査する必要があり、信頼できる工場を探すまでに手間と時間が掛かります。この問題を解決しているのが、「Xometry」になります。
Xometryを使うことで、大手メーカー企業は手間と時間を掛けることなく、製造元を探すことができ、逆に中小の製造業者でも優れた技術を持っていれば、世界のメーカーと付加価値の高いが取引できるチャンスが生まれることになります。
2013年から様々な機能をプラットフォームに追加し、売上は右肩上がりに推移しています。
プロダクト
続いてXometryのプロダクトについて見てみましょう。
新たに部品調達や金型の製作、工具ツールの開発などをしたいメーカー(Buyer)と提携工場(Seller)とのマッチングを行うマーケットプレイスがメインとなります。
Xometryが動画(1分半ほど)を用意してくれており、ご覧になるとプロダクトのイメージが掴めるかと思います。
Buyerが製造したい部品の仕様書を専用サイトからアップロードすると、Xometryのプラットホーム上でAIアルゴリズムが働き、部品の形状や性能から、対応可能な工場の余剰生産力を分析して、見積書がWeb画面上に提示されます。
Buyer側が実際にオーダーを行うとSellerに注文を出し、生産を始め、製品が届けられるという流れになります。
Sellerは、CNC製造、板金製造、3Dプリンティング、板金製造、ダイカスト、射出成形、ウレタン鋳造など、幅広い主要製造プロセスを提供しています。
そして上記プロセスと50を超える仕上げ、およびXometryが提供する何千もの原材料と色のパターンを組み合わせることができます。
一部Sellerに対してのプロダクトも最近リリースしています。
2019年にXometrySuppliesをリリースしており、こちらではSellerが製品を製造するための原料を販売するサプライヤーへのアクセスを手助けしています。
サプライヤーにから原料の値引きを受けたりすることができ、Sellerは製造コストを下げることが出来ます。
さらに2020年にはSellerがキャッシュフローに関して管理ができるようにFinancial関係のプロダクトをリリースしています。
前払金の最大30%を借りることが出来る「Xometry Advance Card」や、製造完了後3営業日以内に支払いを受け取ることができる「FastPay」(通常は製品をBuyerが受け取った後60日とか90日後が実際の支払です。)、Invoiceの自動発行といったサービスあるとのことです。
Seller向けのプロダクトはSellerの40%が現在利用しているようです。
収益/ビジネスモデル・顧客
ビジネスモデルですが、収益の大部分は、Xometryのプラットフォームを通じて注文された製品に対しての手数料から生み出されています。
手数料を払うのはBuyer(注文をするメーカー)です。
なお、近年リリースしたばかりのSeller向けのプロダクトはまだ売上において重要な役目ははたしていないとのことでした。
BuyerはFortune 500(アメリカ企業の売上上位500社)の約30%を含む、43,000社以上を抱えています。
BuyerにはBMWやNASA、ワクチン開発のModerna、ロケットベンチャーのABL Space Systemsなどが名を連ねています。S-1にはこれら企業が載っていましたが、HPに行くとGEやBOSCH、Dellなんかも載っていました。
そして43,000社のうち1年以内にXometryのプラットホーム上で注文、購入を行ったActive Buyerは2021年3月31日時点で24,160に達し、2020年3月31日時点の13,195から83%増加しています。
Buyerが最初にXometryのプラットホーム上で製品を購入した年に基づいて、年を定義したコホートは以下のようになっており、一度購入を行ったBuyerは年々購入量を増やして、Xometryの売上に貢献していることがわかります。
非常に綺麗な図になっています。
市場見通し・規模
続いてXometryが事業を展開している市場について見ていきます。
Sellerの6つの主要な製造プロセスの推定市場規模に基づいて、世界の市場機会は$260 billion(約29兆円)を超えるとXometryは推定しています。
なお、Xometryの売上は2020年に$141million(約155億円)ほどです。売上は製品への手数料なのでそれを考慮する必要がありますが、超巨大な市場が広がっていると言えると思います。
S-1にはこれくらいしか書かれていません。笑
これだけでは少し寂しいので製造業のDXについても見てみます。
企業やメーカーが直面する独自の課題、テクノロジーの革新により、製造業界はデジタル変革(DX)の転換点に到達したと言われています。
実際私が勤めている頭の固そうな旧財閥系のオールドエコノミーですらDXに取り組み始め、一部そういった仕事を企画で行っている私も日々悪戦苦闘しています。笑
以下のような記事もあり、コロナ禍でDXは製造業でも加速し、製造業の全体DXではありますが、今後も年率約20%で成長していき製造業のDX市場は29兆円から84兆円へと拡大する見込みとなっています。
IBMが製造業界誌The Manufacturerと協力して製造業におけるDXの状況を調査したレポート「2021 Digital Transformation Assessment: COVID-19 a Catalyst for Change」によると、製造業企業の67%がコロナ禍でデジタルプロジェクトを加速、または開始したと答えています。
製造業におけるDXへの投資は大きく増えると予測されている。20以上の業界トレンドを調査しているMordor Intelligenceは、ロボティクス、IoT、3D印刷、サイバーセキュリティなどを含む世界の製造業において、DX市場が、2020年の2,639億ドル(約29兆円)から2026年には7,678億ドル(約84兆円)と、6年にわたり年率19.48%で成長していくと予想している。
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決算情報(21年決算)
続いてXometryの業績内容について見ていきたいと思います。
20年のRevenue(売上)は$141Million(約155億円)、Gross profit(粗利)は$33Million(36億円)、Net loss(損失)は$31Million(約34億円)の赤字となっています。
粗利率は23.5%ほどです。
19年の売上は$80Million、Gross profit(粗利)は$14Million、Net loss(損失)は$31Million(約34億円)の赤字だったため売上は+76%の成長、粗利は+120%の成長となります。
粗利率は低いですが改善傾向なのはいいなと思います。
21年の3月までの決算も載っていたのでそちらも見てみます。
21年1QのRevenue(売上)は$44Million、Gross profit(粗利)は10Million、Net loss(損失)は$11Millionの赤字となっています。
20年1Qの売上は$27Million、Gross profit(粗利)は$5Million、Net loss(損失)は$9Millionの赤字だったため売上は+65%の成長、粗利は+83%の成長となります。
営業キャッシュフローはまだマイナスです。
株価、時価総額、バリュエーション
続いて株価、バリュエーションについて見ていきます。
株価推移はこのような感じになっています。
時価総額:$3.5Billion
PSR:24倍
20年売上高$144Millionの場合
仮に21年に50%成長となるとPSRは16倍ほどまで下がります。
感想
以上Xometryの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。
感想としては、製造業のDXはトレンドであり、今後もその流れに乗って成長できそうなところは評価できる点だと思います。
粗利率、営業キャッシュフローのあたりはあまり良くないのでこの辺改善してくることに期待ですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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