企業から新興国への支払、新興国から企業への支払プラットホームを提供している企業dLocalの会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。
・新興市場に特化したクラウドベースの決済サービスプラットフォームを開発/提供
・29ヵ国の新興国、600以上の新興国のローカルな決済方法に対応
・ 直近四半期売上は$40Million、前年同期比+122%、すでに黒字化
・21年度売上ベースのPSRは69倍と超割高
当記事は私自身の投資活動ににおいて興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。
とある旧財閥系オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。
今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。
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会社概要
それでは会社概要について見ていきましょう。
基本情報
dLocalはウルグアイに本社を置き、新興市場向けにクラウドベースの決済サービスプラットフォームを開発/提供するFintech企業です。
具体的にはMerchantが新興国市場で商売をする際に顧客から支払いを受けたり、顧客へ支払いを行うことをオンラインで可能にする決済サービスプラットフォームを提供しています。
例えばMicrosoftはdLocalの決済プラットホームを利用することでナイジェリアにてMicrosoftの製品を販売する際に、支払いの受け入れをナイジェリア固有の決済方法でできるようになり、容易に現地で製品の販売ができるようになったということです。
330以上のMerchantを抱え、29ヵ国の新興国、600以上の新興国のローカルな決済方法に対応してます。
売上は後程詳しく触れますが、$104Million、前年比は129%の成長となっています。
対応している新興国は南米、アジア、中東、アフリカとゴリゴリの新興国でブラジル、インド、中国、インドネシア、ナイジェリア、ケニアなど成長著しい国もカバーしています。
設立は2016年とかなり新しい会社でSebastian Kanovichという方が創業し、現在もCEOを務めています。
Sebastian Kanovich氏はdLocal設立前は中南米を含む海外で広く普及してる電子決済会社 AstroPay の CEO でした。 彼は、ウルグアイの大学で経済学の学士号を取得しています。 また、テルアビブ大学で起業家精神、イノベーション、テクノロジー管理を学び、スタンフォード大学経営大学院でEndeavor Innovation and Growthプログラムを修了したそうです。
Sebastian Kanovich氏はウルグアイで自身が体験したオンライン決済の不便さを解消すべく、2016年にdLocalを立ち上げ 、「enable global merchants to connect seamlessly with billions of emerging market users」を会社ミッションにしています。訳は「グローバルなMerchantが数十億ドルの新興市場のユーザーとシームレスに接続できるようにする」といったところでしょうか。このミッションだけでもdLocalのビジネス内容が何となくわかってきますね。
現在、グローバル企業は新興国でビジネスをしようとする際に、すでに決済インフラが整っている先進国とは違って、現地の支払いに関する専門知識を持つパートナーとの提携を模索する必要があります。例えば為替、その地域の規制、新興市場でのコンプライアンス、税金などです。
例えばブラジルでは、国内だけでしか利用できないクレジットカードがEコマースオンライン決済でもっとも多く使われており、その割合は45%に上る。一般的な国内外で利用可能なクレジットカードは26%にとどまる。またブラジルではBoletoと呼ばれる同国独自のキャッシュベースの決済手段が広く使われている。Boletoはブラジル国内の個人・法人・政府機関の資本流動性を高めることを目的として、同国銀行業界団体FEBRABANが運営する決済手段である。支払いは、ATMや銀行支店、銀行ウェブサイトを通じて行われる。これも国内だけでしか利用できない。
https://innovation.mufg.jp/detail/id=313
上記の記事のように、 新興国各国では独自の決済手段が普及しており、細分化された状況となっています。各国の税制や金融規制を含め、これらの決済手段すべてにMerchantが自力で対応するのは現実的ではありません。 そこに目を付けグローバル企業に対して新興市場向けにクラウドベースの決済サービスプラットフォームを開発/提供しているのがdLocalになります。
dLocalのプラットホームを利用することでMerchantは支払い処理、FX管理、資金回収、資金決済、資金支払いを行うことができ、さらに詐欺防止、規制、コンプライアンス、源泉徴収管理に関する分析レポートの提供を受けることが出来るようになるということです。
プロダクト
続いてdLocalのプロダクトについて見てみましょう。
プロダクトは大きく分けて3つあります。Pay-in、Pay-out、Marketplacesです。
Pay-in
Pay-inは文字通り新興国市場からMerchantが支払いを受け取れるプロダクトになります。
このプロダクトにより、Merchantは国際カードや新興国の国内カード、オンライン銀行振込、デビット、現金など、さまざまな支払い方法で支払いを受けることが可能になります。
これにより、新興国のエンドユーザーは好みの支払い方法でオンライン購入の支払いを行うことができ、Merchantは新興国の大規模なユーザーベースをターゲットにビジネスを行うことが出来るようになります。
以下はナイジェリアからの支払が例になっています。因みにナイジェリアの人口は2050年にはインド、中国に続いて世界第3位になるようですね。
Pay-out
Pay-outも文字通りですが、Merchantが新興国市場のユーザーへ支払いを行えるプロダクトです。
国境を越えた支払い機能と国内から国内への支払い機能の両方がありますが、ユーザーの登録済み銀行口座への支払いのみが有効になります。
典型的な支払いの受取人には、ベンダー、請負業者、運転手、アパートの賃貸人、マーケットプレイスの売り手、払い戻しの受取人が含まれます 。
例えば、ブエノスアイレスは、ライドシェアリングで世界的に最も急速に成長している都市の1つらしいですが、この地域で最大の配車サービス会社2社が、アルゼンチンのドライバーに迅速かつ安全な方法で支払いを行うのにdLocalは役立っているとのことです。
F-1での画像紹介例はなぜかコロンビアでしたが。。。笑
Marketplaces
Marketplaceも文字通りですが…笑 E-commerceのプラットホームを提供している会社が使用するプロダクトですね。
dLocalのMarketplaceを使用すると、グローバルなオンラインマーケットプレイスは、販売者が新興市場への販売を拡大しようとするときに、シームレスな方法で支払いを受け入れる機能を販売者に提供できるようになります。
以下はアメリカの販売者がオンラインのマーケットプレイスを使用することでブラジルの消費者に自分の商品を売ることができ、その支払いをマーケットプレイス上で受け取ることが出来るという図になっています。
dLocalのMarketplaceを使用しない場合、アメリカの販売者は自身でブラジルからの決済について処理しないといけないことが考えられます。(現地銀行の開設、為替の両替など)
このMarketplaceはE-commerceの越境プラットフォームを提供するイスラエル企業Global-E Online Ltd.と被る部分かもしれないですね。
収益/ビジネスモデル・顧客
ビジネスモデルは超単純でdLocalのプラットフォーム上で行われた決済に対して手数料をMerchantから徴収し、それが売上になります。
顧客数は330社以上で業種は、小売、ストリーミング、配車、金融機関、広告、SaaS、旅行関係、eラーニング、ゲームなどと多種多様です。
具体的にはAmazon、Didi、Microsoft、Spotify、Mailchimp、Wix、Wikimedia、Kaishouなどの主要なグローバル企業が顧客となっています。
HPに行くと、Uber、Nike、Booking.com、Dropbox、Tripadvisorなんかも顧客のようでした。
上記顧客陣のTPV(Total Payment Volume:決済総額)コホートは以下の通りで、年々dLocalのプラットホーム上での決済が上がっています。
上記のような年々の上昇により、dLocalのTPVは2020年には$2.1Billion(約231億円)に達しています。
創業した2016年からのCAGR(年平均成長率)は97%と驚異的な数字となっています。(19年から20年は62%成長)
市場見通し・規模
続いてdLocalが事業を展開している市場について見ていきます。
AMIによると、中国を除くdLocalが事業を行っている国では、eコマース全体のPay-in(Merchantが受け取る金額)とPay-out(Merchantが支払う金額)の合計額は推定$1.2Trillion(約13兆円)に上ります。
そして2020年の推定$428BillionのPay-inのうち、86%が新興国内での取引に対応し、わずか14%が国境を越えた取引でした。
となると20年時点でのdLocalのTAMが$1.2Trillion(約13兆円)、SAMが$168Billionという感じかと思います。(SAMはPay-in、Pay-outの14%と仮定)
TAMはTotal Addressable Market、SAMはServiceable Available Marketの略です。
dLocalのTPVは$2.1Billion(約13兆円)ですからTAMで570倍、SAMで80倍のマーケットが広がっていることになります。
$1.2Trillionの全てにアクセスするのは不可能だと思いますが、この3%でも取れれば現在のTPVの18倍、1%でも6倍になります。非常に広いマーケットでビジネスを展開していると言えると思います。(SAMの浸透率は現状1.25%)
さらにAMIによると、全体として、Pay-inは2024年までに$1.1 trillionまで増加すると予想されており、2020年から2024年までのCAGR(年平均成長率)は27%となっており今後も市場そのものが大きく成長していく見込みです。
もう一つ、新興国の中間層について見てみましょう。
継続的な経済成長を背景に、新興市場の中産階級は支出のレベルとオンライン取引の頻度を増やしています。OxfordEconomicsによると、これらがドライバーとなり、新興国市場の2021年から2025年までの平均予想年間GDP成長率は4.9%に及びます。(同時期の先進国市場の予想成長率の3倍以上)
Next Big Futureの調査によると、2020年末には世界の中産階級は40億人ほどいるとされていますが、この人数は2030年には53億人になると言われています。
この10年間で10億人の増加は、主に新興市場で中産階級が毎年1億2000万から1億6000万人増加していることが主な理由となっています。
巨大で、成長性の高い市場でのビジネスということが分かったと思います。
決算情報(21年決算)
続いてdLocalの業績内容について見ていきたいと思います。
20年のRevenue(売上)は$104Million(約114億円)、Gross profit(粗利)は$60Million(66億円)、Profit(利益)は$28Million(約31億円)の黒字となっています。(ここまで書いてPLを初めて見たのですがびっくりしました。)
この規模間かつこの成長力で黒字を確保できているのはと思います。
19年の売上は$55Million、Gross profit(粗利)は$36Million、Profit(利益)は$15Millionの黒字とだったため売上は+89%の成長、粗利は+67%の成長、利益は+87%の成長となります。
21年の1-3月の決算も載っていたので見てみます。
Revenue(売上)は$40Million、Gross profit(粗利)は$23Million(66億円)、Profit(利益)は$17Millionの黒字となっています。
前年同期比からの成長は売上+122%、粗利+109%、利益+1,384%となっています。
粗利が下がっているのが気になるところですが、成長は加速しており、力強さを感じます。
粗利が下がっているとは書きましたが、60%ほどとなっており、Fintechのなかではそこそこの高水準です。
ちなみにVisa,Mastercardは75%超、Paypalは50%ほど、Squareは25%ほど(特殊なBitcoin関係を除くと64%)、Marqetaは40%ほど、affirmは64%ほどです。
過去2年と未来2年の売上推移はこのような感じで綺麗な右肩上がりとなっています。
21年の売上高は$191Million、$340Millionが予想されています。
NonGAAPのEPS(一株当たり利益)についてのグラフはまだありませんでした。
株価、時価総額、バリュエーション
続いて株価、バリュエーション、について見ていきます。
株価についてはこのような感じです。
バリュエーションについては以下になります。
時価総額:13Billion
PSR:125倍
(20年通年売上:$104Millionの場合)
PSR:69倍
(21年コンセンサス売上予想$191Millionの場合)
非常に高いな…という印象です。黒字化しており、成長性が高いとはいえちょっと。。。
株主構成はこんな感じです。上場して間もないのでVCやInsiderが多く持っています。
感想
以上dLocalの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。
感想としては、新興国市場はこれからも成長に関してかなり期待を持てる分野だと思いますし、成長も加速しているのですが、それを反映してかかなりバリュエーションが高いかなという印象です。
ただ、すでに黒字化していること、新興国市場向けのFintechということで引き続きウォッチしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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