クラウドベースでエンドポイントセキュリティを提供している企業Sentinel One(センチネルワン)の会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。
日本で投資先として人気がある? CrowdStrike(クラウドストライク)の競合です。
Crowd Strikeとの比較もしながらSentinel Oneについて見ていきたいと思います。
(記事の最後の方に比較表を作成しています。)
・エンドポイントセキュリティのSaaS企業でCrowd Strikeとガッツリ競合
・クラウドベースのセキュリティ企業、SaaSモデルで粗利58%
・ 直近四半期売上は$37Millionで前年同期比+106%と成長が加速
・売上規模はCrowd Strikeの1/10ほどだが成長性は上
当記事は私自身の投資活動ににおいて興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。
とある旧財閥系オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。
今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。
是非Twitterのフォローよろしくお願いいたします。
会社概要
それでは会社概要について見ていきましょう。
基本情報
Sentinel Oneはアメリカ、カリフォルニアに本社を置き、クラウドベースでエンドポイントセキュリティのプラットホームを提供するSaaS会社です。
エンドポイントとは我々が利用するPCやモバイルのことで、このエンドポイントを侵害するサーバー攻撃に太刀打ちし、保護するのがエンドポイントセキュリティになります。
そしてエンドポイントやネットワーク、クラウドといったセンサーから情報を収集・分析し、今まで見えなかった攻撃を可視化するセキュリティ対策ソフトウェアの総称はXDRと呼ばれ、Sentinel OneはこのXDRを定義し、提供する企業と自ら謳っています。
XDRの詳しい説明はPaloaltoNetworkのHP(日本語)に譲ります。
設立は2013年でTomer Weingartenという方が共同創業し、現在もCEOを務めています。
創業前、Weingarten氏は、2007年5月から2012年12月まで、彼が共同設立したスタートアップでリアルタイムの消費者インサイトを提供するテクノロジー企業であるToluna Holdings Limitedで、製品担当副社長を含むさまざまな役職を歴任していたそうです。それ以前は、魅力的なコンテンツ形式を通じて新しい広告収益ストリームを作成するプラットフォームのCarambola Media Ltd.を共同設立し、2011年5月から2012年5月まで最高技術責任者を務めてもいたということです。時期が被っていますが二足の草鞋だったんですかね。
最新の高度なサイバー攻撃は思いのままにエンドポイントを侵害しており、従来のセキュリティアプローチでは太刀打ちが出来ていないと言われています。Sentinel Oneは、「これまでにない新しいエンドポイント保護アプローチを開発する」ことを目的に設立されています。
現状のレガシープラットホームでは、エンドポイント検出および応答(EDR)が人力によるものとなっており、このアプローチでは、攻撃を検出するために1分、調査するために10分、対応するために60分掛かるという「1-10-60」ルールを広め、 かつては達成可能な最良のサイバーセキュリティと言われていました。
しかし、最近のランサムウェア攻撃は、組織を侵害し、データを盗み出し、完全なシャットダウンを強制するのに数ミリ秒しか掛からないと言われています。 従来の人力によるEDRではサイバー脅威を防ぐのを人間の努力に依存しており、これでは最新の攻撃には耐えられません。
Sentinel Oneは上記の状況を「ナイフを銃撃戦に持ち込むこと」だと一蹴しています。
「1-10-60」ルールを「0-0-0」にすべくクラウドベースで専用AIを活用しリアルタイムで脅威を検知、防御を行えるXDRプラットフォーム「SingularityPlatform」を開発しました。
このプラットフォームは、無数の異なる顧客のデバイスやネットワークといったソースからウイルスやサイバー攻撃に関するデータをリアルタイムで取り込み、相互に関連付け、処理を実行します。
これを行うことで即座にウイルスやサイバー攻撃の情報をセキュリティプラットフォームに反映し、すべての顧客のセキュリティに反映することができ、従来とは違う新しい形のセキュリティプラットホームとなっています。
なお2021年はエンドポイントセキュリティ分野でガートナーのマジック・クアドラントでマーケットリーダーとして認識されています。同じ分野の競合としてはCrowd Strikeが目立ちますね。
Microsoftも入っていますが、エンドポイントのセキュリティって何やっているんでしょうか…
マジック・クアドラントとはITコンサルティング会社のガートナーが発行している一連の市場調査レポートのことで、右上のリーダーが最高評価です。
詳しく知りたい方はWikiで
なおCrowdStrikeについては知っている方も多いと思いますが、やすさんのブログとNekoさんのNoteが非常に参考になります。Sentinel Oneの領域であるエンドポイントセキュリティを知るために一読されることをお勧めします。
ここ以降はお二人の記事も参考にしつつ、Crowd Strikeとの比較をしながらSentinel Oneについて見ていきたいと思います。
Sentinel OneとCrowd Strikeはエンドポイントセキュリティですが、 SaaSアプリやクラウドへ安全に接続できるようするセキュリティサービスを提供しているセキュリティ企業もあります。
Zscalerがそれで、分析記事にもしています。セキュリティ企業に興味ある方には是非読んで頂きたいなと思います。
プロダクト
上記でSentinel Oneの会社内容について理解できたかと思いますので、続いて具体的なプロダクトを見てみます。
XDRプラットフォーム「SingularityPlatform」がプロダクトになります。
下の図のようにクラウド上にエンドポイントセキュリティの機能やインシデント対応などのセキュリティオペレーション機能や、各デバイス間の制御といったITオペレーション機能、そして付随するサービス機能が一つのパッケージとなっています。
当然企業はこれらすべてを契約する必要はなく、それぞれ使用したい機能を利用する形を取るSaaS形式となっています。
このあたりはCrowd Strikeとそっくりですね。
このプラットフォームを導入することでの主なメリットは以下が挙げられています。
収益/ビジネスモデル・顧客
クラウドサービス企業のため、収益は「SingularityPlatform」に対する顧客からのライセンス料になります。
通常ライセンスは1-3年の契約になるとのこと。
顧客数は80ヵ国以上、4,700社以上で、NRRは124%となっています。そしてこれら顧客のからの満足度は97%となっています。
NRRは(Net Revenue Retention)の略で既存顧客からの売上維持率を意味し、100%を上回っていれば、プラットフォームの追加やライセンス数の増加などで既存顧客からの売上が増えていることになります。
そして2021年度または2021年4月30日に終了した3ヶ月間でSentinel Oneの収益の3%を超える単一の顧客はいなかったということで非常にバランスが取れていると思います。
なお、Crowd Strikeもビジネスモデルは同じで顧客数は11,420でNRRは125%となっています。
具体的な顧客は以下がHPに載っていました。
S-1には、Autodesk、Fiverr、NVidia、Wells Fargoなんかも載っていました。
そしてARRが以下になります。
ARRはAnnual Recurring Revenueの略で、毎年決まって得られる1年間分の収益、売上のことです。SaaS企業の重要指標です。
22年1QのARRは$161Millionとなっています。前年同期比+96%です。
一方Crowd StrikeのARRはこちら
22年1Qは$1,194Millionで前年同期比+74%です。
Crowd StrikeがIPOしたのは19年6月で、下表ではFY20年1Qがその時点になりますが、その時点でのARRは$365Millionでしたので、Sentinel Oneよりも大きい規模感でIPOしたことがわかります。
Sentinel OneのARRと同程度だったのはCrowd Strikeにとって3年前ということになりますね。
市場見通し・規模
続いてSentinel Oneが事業を展開している市場について見ていきます。
まずセキュリティ業界全体では以下のように今後大きな成長が見込まれています。
さらにランサムウェア(身代金要求型のコンピューターウィルス)による情報機能マヒ事件や、ハッキングによる情報漏洩事件など、インターネットとDX(デジタル・トランスフォーメーション)の進化とともに、情報セキュリティの必要性がますます高まっています。
サイバー犯罪による被害総額は世界全体で約$6trillion(約654兆円)にも上ると言わていますが、サイバーセキュリティ業界の売り上げは、2019年の$156Billion(約17兆円)、2020年には$170billion(約18.5兆円)に増大してはいるものの、比較にならないくらい小規模です。
サイバーセキュリティ業界の売り上げは 急速に拡大しており、2021年には$200Billionに到達し、その後も年率+15%で2027年まで拡大し続けるという予想もされています。
The Motley Fool
IDCによると、Sentinel Oneのプラットフォームが現時点で対応するアドレス可能な市場は、2024年に$40.2 billion(4.4兆円)に達すると予想され、2021年から2024年間の平均年間成長率(CAGR)は11.9%となっています。
後述しますがSentinel Oneの売上は$93million(約102億円)ですので上記の0.2%ほどとなります。
Sentinel Oneは上記のターゲットとする市場$40.2 billionは以下3つで構成されるとしています。
企業エンドポイントセキュリティは2021年には$9.7 billionの市場であり、2024年には$12.0 billion に成長する見込みです。
デバイスの脆弱性評価などサイバーセキュリティ分析は 2021年には$13.1 billionの市場であり、2024年には $17.1 billionに成長見込みです。
IT運用管理は2021年には$5.9 billionの市場であり、2024年には$11.1 billionに成長見込みとなっています。
以下はCrowd StrikeのTAMになりますが、2023年に$40.2 billionに到達ということで同じような数字です。
決算情報(20年決算)
続いてSentinel Oneの業績内容について見ていきたいと思います。Sentinel Oneの年度決算少し変わっていて1月〆のようです。
21年1月末までの1年間の売上は$93Million(約102億円)、Net Lossは$116Million(約127億円)の赤字となっています。粗利率は58%です。
前年からの売上成長率は+102%と強力です。
一方21年4月〆の3か月間売上は$37Millionで前年同期比+106%と僅かではありますが成長が加速しています。
Sales and Marketing費用もかなり増えていますが…
一方Crowd Strikeの21年度(21年1月〆)売上は$874Million(約961億円)でNet Lossは$92Million(約101億円)の赤字となっています。 粗利は76%です。
前年からの売上成長率は+82%です。
一方21年4月〆の3か月間売上は$303Millionで前年同期比+70%です。
粗利率についてはCrowd Strikeの圧勝のように見えますが、3年ほど前は57%ほどでした。
ARRについても粗利率についても3年前のCrowd Strikeによく似ています。
Sentinel Oneの営業キャッシュフローはまだマイナスです。(Crowd Strikeはプラスです。)
株価、時価総額、バリュエーション
続いて株価、バリュエーションについて見ていきます。
IPO価格は$31~$32で予定されており、$32ドルの場合、$8Billionほどの時価総額になる見込みでしたが実際は$11Billionとなりました。
株価推移はこのような感じです。
その場合のバリュエーションは以下でCrowd Strikeもびっくりの高さということになるかなと思います。
時価総額:11Billion
PSR:118倍
(20年通年売上:$93Millionの場合)
PSR:74倍
(21年4月末×4$148Millionの場合)
Sentinel OneとCrowd Strikeの比較
上でいろいろ見てきましたが、表にまとめると以下のようになります。
スケールは圧倒的にCrowd Strikeですが、成長性はSentinel Oneという感じになります。
Sentinel One | Crowd Strike | |
21年売上 | $93Million(約102億円) | $874Million(約961億円) |
22年1Q売上 | $37Million | $303Million |
売上成長率 | 前年同期比+106% | +70% |
粗利率 | 58% | 76% |
22年1QARR | $161Million | $1,194Million |
ARR成長率 | +96% | +74% |
バリュエーション | PSR74 | PSR43 |
そして技術面などに関してですが、それぞれの会社がそれぞれの競合に対しての比較サイトを作っていますので…笑
そちらについてまとめてみました。
正直両社の主張でかみ合わない部分もあるので水掛け論のような気がしますね。。。詳しく知りたい方はそれぞれのHPに目を通されると面白いと思います。
なお、Crowd StrikeがIPOしてからの株価推移は以下の通りで2年で4倍近くになっています。
Sentinel OneのARRは3年前のCrowd Strikeと同程度ですが、もし仮にCrowd Strikeと同程度の成長をこれからも続けられるのであればポテンシャルはあるのではないかなと思います。
繰り返しになりますが、同程度の成長を維持できればです。
感想
以上Sentinel Oneの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。
セキュリティ関係はこれからも期待を持てる分野だと思います。Crowd Strikeのように成長していけるか注目ですね。
個人的にはCrowd Strikeのゴリゴリの競合ということで今後決算などチェックしていきたいと思いました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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