ロケットベンチャー企業Astra Space(以下Astra)の会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。
・小型衛星を小型ロケットで打ち上げることに特化したロケットベンチャー
・23年から25年の売上CAGR(年平均成長率)は142%、20年までは売上0
・ 複数の政府・防衛機関と打ち上げについて契約済で金額は$150Million(約165億円)超
・25年にはロケット打ち上げを年間300回、売上は$1,500Million(1,660億円)を目指す
当記事は私自身の投資活動ににおいて興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。
とある旧財閥系、日経225オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。
今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。
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会社概要
それでは会社概要について見ていきましょう。
基本情報
Astraはアメリカ、カリフォルニア州に本社を置き、 小さいサイズの衛星を打ち上げることに特化した超小型ロケットを開発している企業で2021年にSPAC上場を果たしました。
SPAC上場とは、事業を営んでいない“空箱”の企業が上場し、その後、ベンチャー企業などを買収することで、実質的にスピーディな上場を実現する仕組みのことです。
サンフランシスコ近郊のアラメダというところに拠点を構えており、 ここは元々アメリカ海軍によって建設された航空基地で、エンジンテスト施設があるところを改装したということです。
設立は2016年とかなり新しい会社でChris C.KempとAdam Londonという二人が共同創業し、それぞれCEOとCTOを務めています。
ちなみに CEOはChief Executive Officerで「最高経営責任者」でCTOは 「Chief Technology Officer」 で「最高技術責任者」です。COO:Chief Operating Officerで「最高執行責任者」、CFO:Chief Financial Officerで「最高財務責任者」もあります。笑
Chris C.Kemp氏はAstra設立以前、NASAでCTOを務め、GoogleとMicrosoftと提携し、Google MoonとMars(Google Earthの月と火星版で衛星写真を見たりできます。)の作成を支援し、ホワイトハウスと協力して米国連邦政府向けのクラウドコンピューティング戦略を開発したそうです。
Adam London氏はAstra設立以前、NASAなどと提携してミニチュアロケット技術を発明しています。 マサチューセッツ工科大学で航空宇宙工学を専攻し、Adam氏の研究は世界最小の液冷式化学ロケットエンジンの開発に至ったとのことでAstraの小型ロケット技術はAdam氏によるところが大きそうです。
Astraは「 Launch a new generation of space services to improve life on Earth 」を会社ミッションにしています。訳は「地球上の生活を改善するための新世代の宇宙サービスを立ち上げる」といったところでしょうか。
Astraは超小型で安価なロケットによる「宇宙へのアクセスを毎日提供すること」を目指し、人工衛星を利用した観測分野や、衛星通信事業などを発展させることを目標にしています。
Astraは2019年10月に、AirbusやSalesforceのCEOであるMarc Benioff氏などから、約1億ドルの資金調達にも成功しました。その後、2020年2月にDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)が実施する技術開発プロジェクト「DARPA Launch Challenge」に参加し小型ロケットの打ち上げに挑戦したことで、Astraは一躍注目を集めました。
というのも設立から4年で商用のロケットを宇宙まで飛ばしたのは今まで最短で、イーロン・マスクが手掛けるSPACEXの7年や競合のROCKET LABの12年よりも大幅に短かかったからです。
※宇宙までロケットは飛ばしていますが、まだ衛星軌道に乗せた実績はありません。
Astraは小型ロケットに特化していますが、同じロケットベンチャーのRocket labは有人宇宙船も視野に入れるなどAstraとは異なる路線を歩んでいます。Rocket labについても分析していますので是非こちらもご覧ください。
事業領域・プロダクト
続いてAstraの事業領域とプロダクトについて見てみたいと思います。
Astraのビジネス領域は宇宙ですが、その中でもLow Earth Orbit:LEO(低軌道)の小型衛星を小型ロケットで打ち上げることに特化しています。
衛星はグローバルブロードバンド、資産監視、地球観測、および防衛アプリケーションをより安価で高性能で提供できるようするため、従来よりも急速に小型化、安価化され、数が大幅にに増えています。
低軌道に衛星を飛ばすことで地球との距離が近いため、通信は速く、宇宙からの地球観測の画像はより高精度になるメリットがあります。
ただし、ロケットは同じように進化しておらず、ほとんどのロケットは、古い衛星と有人宇宙飛行ミッションに引き続き焦点を合わせていると言われています。 そのため、既存のロケットはサイズが大きく、高価で、打ち上げ頻度が低く、進化する宇宙市場のニーズを満たすには不十分であるとAstraは考えています。
上記問題を解決するためAstraは小型ロケットの打ち上げに特化しており、 「Launch Services」 、「Spaceport Services」、「Satellite Services」3つのプロダクトを提供することを予定しています。(Astraは売上をまだ上げられていないので予定です。)
Launch Services:衛星事業者や政府に、迅速かつ手頃な打ち上げサービスを提供するサービスです。Astraのロケットを発射させるには、高度に自動化された発射操作を活用するため、小さなコンクリートパッドと6人のAstra従業員しか要らないとのことです。
Spaceport Services:主要な政府機関の顧客向けにアストラロケットを打ち上げる機能を備えた宇宙港(ロケット発射場)を提供するサービスです。
2022年までに最初の専用商用宇宙港を建設および運営するための初期契約にサインすることを目指しているとのこと。
Satellite Services:モジュール式の衛星を顧客に提供するサービスです。 衛星サービスは、軌道上での衛星の運用サポートなどがサービスに含まれています。
衛星は昔バスくらいのサイズでしたが、技術の進歩でどんどん小さくなり今ではトースターと同じくらいのサイズになっているようです。
なお、Astraのロケットと他社のロケットの比較が以下になります。大きさは500kg以下でSpaceXの1,500kg以上のロケットと比べるとかなり小型であることがわかります。ちなみに一回の打ち上げ費用は$4million(440万円)以下とのことです。
ロケット打ち上げの費用感度は全くありませんが、安いんだと思います。。。笑
収益/ビジネスモデル・顧客
Astraですが、2020年まで収益は発生していません。
直近ではLaunchServicesが収益のかなりの部分を生み出すことが期待されています。 時間の経過とともに、 Satellite Servicesがより急速に成長し、2025年以降の収益が上がってくることをAstraは予想しているとのことです。
2020年時点で収益は発生していませんが、50件を超える打ち上げと100件を超える衛星に関する契約を顧客とすでに締結しており、その金額は$150Million(約165億円)を超えるとのことです。(2021年1月31日時点)
顧客の内容は様々な衛星オペレーター、衛星メーカー、5つを超える政府機関、防衛機関とのことです。
市場見通し・規模
続いてAstraが事業を展開している市場について見ていきます。
宇宙に関連する事業は2040年に$1Trillion(110兆円)を超え、宇宙は次の「Economic Frontier」と言っています。
さらに政府による宇宙への投資は$40.7Billion(4.5兆円)を超え、衛星製造に使われる資金は2030年までに$216Billion(24兆円)になると言われており、まさに宇宙のように巨大なマーケットが広がっていると言えると思います。
さらに2020年から29年までの間に衛星は38,000個以上生産され、打ち上げられる見込みとなっており、その数は2010年から19年の間の14倍です。
Astra以外のソースも見てみたいと思いますが、NTTデータが見やすい資料を公開していました。
こちらでも宇宙ビジネスの規模は2040年に$1Trillionを超えるとなっています。
長いスパンですが、2016年から40年まで年率5.3%での成長が予想されています。
人工衛星を利用した観測分野や、通信事業の成長がなかでも著しいです。
SpaceXのStarlinkのスコープもこのあたりですね。
最近の宇宙市場の全体規模について調べてみると366Billionのようです。
決算情報(21年決算)
続いてAstraの業績内容について見ていきたいと思います。
売上がまだない会社なのでPLもキャッシュフローも見るに堪えない内容になっています。(2020年は$68Million:約75億円の赤字です。)
というわけで2021年以降の業績について見ていきたいと思います。
会社側の資料での売上推移は以下の通りで2021年に$4Million(約4.4億円)の売上を上げ、25年には$1,508Million(1,660億円)の売上を目指しているとのことです。
UFCF:フリーキャッシュフローは2024年にプラスになる見込みのようです。「フリーキャッシュフロー」=「営業キャッシュフロー」ー「投資キャッシュフロー」で会社側が借金の返済や自社株買いなど自由に使えるお金のことです。
Opexとは「Operating Expense」 で運営費、Capexとは「Capital Expenditure」で設備投資費です。
売上の内訳としてはこのような感じで、「Launch Services」が収益の大半を占め、「Satellite Services」が24年頃から存在感を出し始め、「Spaceport Services」が花を添えるという感じでしょうか。
25年にロケットの打ち上げは年300回、衛星の打ち上げ個数は660個、Space portは3つを目指しています。
売上成長率は22年が約1,700%、23年、24年は200%超、25年でも92%を目指しており、23年から25年のCAGR(年平均成長率)は142%に上ります。粗利率も最終的には70%を目指すなど超アグレッシブな内容になっています。
株価、時価総額、バリュエーション
続いて株価、バリュエーションについて見ていきます。
株価推移はこのような感じになっています。
SPACなのでバリュエーションを見る意味があるのか微妙ですが、一応こんな感じです。
時価総額:$3Billion
PSR:750倍
21年売上高$4Millionの場合
PSR:64倍
22年売上高$47Millionの場合
PSR:2倍
25年売上高$1,500Millionの場合
ちなみに他のSPACや他の宇宙関連企業とのバリュエーション比較が以下で、Astraは比較的安いとあくまで企業側は主張しています。
株価が$10の場合25年の売上に対して時価総額が1.4倍。(Virgin Galacticは25年売上に対して9.3倍、Boeingは21年の売上に対して2.1倍)
感想
以上Astraの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。
感想としては、宇宙関連銘柄ということで非常に期待感がありますが、やはりSPACということでまだ売上もない段階ため、買いは焦らずというのがピッタリかなと思いました。
引き続き上記の計画がきちんと達成されていくのかチェックしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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