世界最大のデジタルバンクとも言われるブラジルのFintech企業Nubankの会社概要、事業領域、事業領域の市場、決算推移、株価情報についてまとめています。
・ブラジルのFintechで世界最大のデジタルバンク
・ 顧客数は4,810万人で18年から13倍
・21年の1-9月は売上は$1,062M YoY+99% 21年3QはYoY+208%
・時価総額$50Bを目指しPSRは26、粗利率47%
当記事は私自身の投資活動において興味のある銘柄の情報を整理する目的で作成するものであり、該当銘柄への投資を推奨するものではありません。
とある旧財閥系、日経225オールドエコノミーで投資経済性を見ている不思議紳士です。20代でアメリカ株初心者です。PFの7割はVTIですが、余裕資金で個別株に挑戦中です。
今後様々な企業の分析をしていきたいと思っています。
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会社概要
それでは会社概要について見ていきましょう。
基本情報
Nubankはブラジル、サンパウロに本社を置き、ブラジル、コロンビア、メキシコでデジタルバンクを展開するFintech企業です。
顧客数(4,810万人)とアプリダウンロード数では世界で最も大きなデジタルバンクと言われています。
設立は2013年と新しい会社でCEOは創設者のDavid Vélez Osornoという方が務めています。
Vélez(ベレズ)氏はコロンビア出身の40歳でNubankを設立する前は、2011年1月から2013年3月までSequoia Capital(セコイアキャピタル)でラテンアメリカ投資グループを担当していました。 その前は、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、などで投資銀行業務と成長株関係の仕事に従事していました。 スタンフォード大学で経営科学と工学の理学士号と経営学修士号も取得しているということでバリバリのエリートですね。
セコイアキャピタルは有名なベンチャーキャピタル(VC)で世界最大のVCとも言われており、今までAppleやGoogleなど名立たる企業に投資をしてきています。
Nubankは「to fight complexity to empower people in their daily lives」を会社ミッションにしています。訳は「人々の日常生活に力を与えるために複雑さと闘う」といったところでしょうか。
ブラジルでは悪名高く官僚的で恐ろしい銀行体験が一般市民にとって普通でした。
長年にわたりブラジルでは貯蓄資産やローンの8割以上を五大銀行が掌握し、他国に比べてはるかに高い借入利率が設定されてきた。クレジットカードによっては年利が450%に上るケースもある。
https://36kr.jp/149698/
例えば上記なような例が挙げられ、こういった状態を打破すべく「to fight complexity to empower people in their daily lives」をミッションとしてNubankは誕生しました。
Nubankは上記のようなブラジルでのクレジットカードの問題点に目を付け、2014年にクレジットカード事業を開始します。スマートフォン上で簡単に操作でき、年会費無料、低金利など他の銀行にはない強みで急速に市場を拡大し、その後もローンやオンライン保険、投資など様々な事業を展開してきてました。
それに従い会員数はどんどん伸びていき、2021年9月30日には15歳以上のブラジル人口の約28%を含む4,810万人の顧客を抱え、 顧客数とアプリダウンロード数では世界で最も大きなデジタルバンクになるまでに成長しています。
SquareのCashappやPaypalのVenmoのアクティブユーザー数が4,000万人ほどと言われているのでいかにNubankの会員数が多いかがわかります。
なおNubankのアクティブユーザー数はF-1によると会員数の73%ということなので約3,500万人ほどとなります。
プロダクト
続いてNubankのプロダクトについて見てみたいと思います。
Nubankのプロダクトは大きく分けて5つあり(1) spending, (2) saving, (3) investing, (4) borrowing,(5) protectingとなっています。
(1) spending
手数料無料のクレジットカードやデビットカード、空港ラウンジにアクセス出来たり、キャッシュバックが多い有料のプレミアムクレジットカードやデビットカード(月額約1,000円)、スマートフォンを通じて無料でモバイル決済できるMobile Paymentsがこちらのカテゴリーに入っています。
(2) saving
こちらは銀行口座のプロダクトになります。
個人の口座では年会費や維持費は掛からず、普通預金や振り込みや支払いをしたり、アプリを通じて口座情報にアクセスしたり、残高を自動的に国債に投資したりするサービスがあります。
法人向けの口座もあり、こちらも年会費や維持費は掛からず個人口座と同様のことが可能で、さらに経費の支払い設定や顧客からの支払いを受けるなどが可能となっています。
(3) investing
こちらは投資関係のサービスになります。
株式、債券、オプション、ETF商品への投資が可能で、1ドルから投資が可能です。
(4) borrowing
こちらは個人ローンやBuy Now Pay Later(分割後払い)がラインナップされています。
個人ローンは完全デジタルローンで、承認プロセスはデジタル化されており、ローン前のシミュレーションからローン管理をデジタル口座で行うことが出来ます。
Buy Now Pay Later(分割後払い)は今流行りのBNPLというのですね。アプリ内で分割払いが完結し、最大12回に支払いを分けることが出来ます。
アメリカの企業ですがBNPLを専業にしているFintech、Affirmという会社もあります。BNPLのビジネスモデルなどに興味ある方はこちらも是非。
(5) protecting
最後は生命保険のプロダクトです。
最低2ドルからのプランがあり、Nulifeという名前で保険を販売しています。
今後もプロダクトは拡大していく予定で、F-1にはECやヘルスケア関係のことについて触れられていました。
収益/ビジネスモデル、顧客
収益モデルは利息収入と手数料収入の2つになります。
利息収入はローン、クレジットカード業務(リボルビングおよび借り換えクレジットカード残高および個人ローン)の利息収入がメインとなります。
手数料収入はクレジットカードやデビットカードの決済手数料がメインでクレジットカードの延滞金や投資・生命保険の手数料なども含まれています。
後ほど業績部分で触れますが、売上の6割弱が利息収入で、4割強が手数料収入となっています。20年から21年の成長率はそれぞれ107%と86%と高成長です。
顧客は現状ブラジル、コロンビア、メキシコ3か国の4,810万人で18年の1Qから4年弱で顧客数は13倍となっています。(3か国の人口は4億人ほど)
新興国での決済に特化したFintechでd-Localという会社もあります。興味ある方は是非こちらも読んでみてください。
Nubankの驚くべき点は顧客の獲得方法で友人や家族などの口コミ、SNSなどを駆使することで顧客の80%~90%をマーケティング費用を掛けずに獲得しています。顧客獲得単価は5ドルとなっており低水準です。
例えばInstagram、Facebook、Twitter、LinkedIn、YouTube、TikTokで合計約960万人のフォロワーと4,400万回のインプレッションを獲得しています。
その他2点面白いなと思ったマーケティングを紹介します。
1点目ですが、Nubankは独自の教育コンテンツを配信しており、YouTubeやブログなどで配信しています。YouTubeのチャンネルには31万人のチャンネル登録者がいて1,600本以上の動画を制作し、合計2,800万回以上の再生回数を記録しています。
2点目はブラジルのポップスターでインフルエンサーのアニッタさん(Instagramでフォロワー5,400万人以上)と提携しており、新製品の紹介を行ったりしています。さらにアニッタさんは21年6月からNubankの取締役会に加わったそうです。笑
インフルエンサーとの提携はノーコストではないでしょうが、Nubankは面白いマーケティングを展開してますね。取締役会にも加えるのは海外って感じです。
こういった取り組みが爆発的なユーザー数の成長に繋がっていると感じられますね。
顧客からの評判も上々のようで、100万人当たりのクレームもかなり少なくなっています。
市場見通し・規模
続いてNubankが事業を展開している市場について見ていきます。
TAMとSAMという単語が出てきますが、概要は以下になりますのでこちらを抑えて読んでみてください。
TAMは「Total Addressable Market」の略で、ある市場の中で獲得できる可能性のある最大の市場規模、つまり商品・サービスの総需要のこと
SAMとは、「Serviceable Available Market」の略で、TAMの中でターゲティングした部分の需要のこと from:ingrow
世界銀行によると、ラテンアメリカは2020年12月31日現在の総人口は6億5200万人、2020年のGDPは$4.5 trillion(約500兆円)です。現在、Nubankはブラジル、メキシコ、コロンビアで事業を展開しており、これらを合わせて、この地域の人口とGDPのそれぞれ60%と61%を占めています。
NubankのSAMには、現在ブラジルで運営しているリテール金融サービス(クレジットカード決済、個人ローン、投資業務など)が含まれています。
オリバーワイマンレポートによると、リテール金融サービスの潜在的な収益は2020年に$99 billionに達し、2025年までに5%のCAGR(年平均成長率)でUS$126billionに成長すると予測されています。
2020年の$737millionの売上と、2021年9月30日に終了した12か月間の$1.0 billionの収益で見るとこのSAMの約1%を占めるのみとなっており、大きな市場が広がっています。
短期SAM(NTSAM)には、ブラジルに加えて、Nubankが最近参入した国であるメキシコとコロンビアも含まれます。オリバーワイマンレポートによると、リテール金融サービスのNTSAMは2020年に$129 billionに達し、2025年までに7%のCAGRで$177 billionに成長すると予測されています。
最後に、TAMはラテンアメリカ全体の潜在的な機会の合計を表します。オリバーワイマンレポートによると、小売金融サービスと市場の収益機会は2020年に$186 billionに達し、2025年までに8%のCAGRで$269 billionに成長すると予測されています。
TAMの各業種毎のブレイクダウンは以下になります。
今後もNubankは展開している国を増やしていくということでTAMについてもあながち夢物語な市場ではないかなと思います。
決算情報
続いてNubankの業績内容について見ていきたいと思います。
20年の売上は$737million(810億円)で営業損失は-$193millionとなっています。前年比売上成長率は+20%で粗利率は44%です。
粗利率は高くありませんが、決済系のFintechはこのくらいだと思います。virtual card発行のMarqetaも同じくらいの粗利率です。
20年はCovid-19の影響がかなり大きく、前年比で業績をあまり伸ばせませんでした。
PLで販管費は$19millionで売上の3%しか掛かっておらず売上との比率が低いことが数字からもわかります。
21年の1-9月は売上は$1,062million、営業損失は-$82millionとなっています。 売上成長率は+99%で粗利率は47.6%です。
こちらでも販管費は$45millionと売上との比率は4%ほどとなっています。
四半期毎のPLもあったので貼っておきます。直近の21年の3Qだけ見ると売上成長率は驚異の208%となっています。
21年1-9月の営業キャッシュフローはマイナスでした。
株価、時価総額、バリュエーション、他社比較
続いて株価、バリュエーションについて見ていきます。
こちらは情報が出次第更新します。
情報によると時価総額は$50billionほどになる見込みとのことです。
そうすると以下バリュエーションになるかと思います。
時価総額:$50billion
PSR:26倍
21年3Q売上高$481million×4の場合
ただ、間違いなく人気化する案件化と思いますので、時価総額はもっと高くなるような気はしますね。$70~80billionほどにはなるのではないでしょうか。
Fintechなどその他銘柄のバリュエーションについては以下にまとめています。
感想
以上Nubankの企業情報や、事業領域の市場、決算を見てきました。
感想としては、新興国系Fintechということで個人的にかなり興味のある会社で調べていて楽しかったです。マーケティング方法もユニークでインフルエンサーを取締役会に加えるのは海外って感じで面白いなと思いました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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